会社を設立するために最低限必要な費用としては、定款の作成、認証費用と登記のための登録免許税が挙げられます。
紙の定款を作成する際には、株式会社であっても合同会社であっても印紙代として4万円が必要です。電子定款の場合には、印紙代はかかりません。
株式会社の場合には定款の認証費用として5万円が必要です。合同会社の場合には定款の認証費用はかかりません。また、定款の謄本を作成するためには、どちらの形態でも2,000円程度が必要です。
登録免許税は資本金の額によって変動しますが、最低額は株式会社で15万円、合同会社の場合には6万円です。
まとめると、会社設立のために最低限必要な費用は、株式会社では202,000円、合同会社は62,000円です。設立費用をできる限り抑えたいという場合には合同会社が向いています。
参照:国税庁「登録免許税の税額表」
株式会社では、新株発行などの方法によって広い範囲から大きな金額の資金調達を行うことができます。また、遵守すべき法律の規制が多いため、信用性が高く金融機関からの融資も受けやすいと言えるでしょう。
一方、合同会社では、出資者が業務執行権を持つため、株式会社と比べて広い範囲からの資金調達には向いていません。多くの人が業務執行権を持つと会社組織としての統率が難しくなるからです。
また、合同会社は比較的手軽に設立できる点、意思決定が閉鎖的になりやすい傾向がある点などから、信用力が低いとされています。そのため、株式会社と比べて大型融資の難易度が高いといえます。
このように、合同会社は株式会社と比べて資金調達の方法が限定されるため、大きな金額を必要とする企業には向かないと言えます。
この章の冒頭でも記載したとおり、株式会社でも合同会社でも出資者の責任が出資額の範囲に限られるという点は同じです(会社法580条2項)。つまり、会社が大きな負債を抱えたとしても、株式会社の株主や合同会社の社員は自分が出資した金額以上の責任を問われることはありません。
株式会社の出資者が「株主」と呼ばれるのに対し、合同会社の出資者は「社員」と呼ばれます。合同会社の「社員」は出資者であり、業務執行者でもあります。同じ名称でも株式会社の社員とは意味合いが異なりますので注意が必要です。
スモールビジネス型の事業を立ち上げる際には合同会社が向いています。既存の市場に対して小規模に事業を立ち上げるスモールビジネスであれば、自己資金や銀行からの少額融資で創業しやすいためです。
スタートアップ型の事業に比べて大型の資金調達を行う必要性が低いため、株式会社を選択するメリットが小さいと言い換えることもできます。
小規模かつスマートな立ち上げのために、合同会社での設立を選択肢に入れるのは有効です。また、本店所在地としてレンタルオフィスやバーチャルオフィスを利用することで、さらなるコストカットを図れます。
イニシャルコスト、ランニングコストを抑えつつ、快適に作業できる空間をお探しの方には、リージャスのレンタルオフィスがおすすめです。
フリーランスが法人成りする際にも合同会社がおすすめです。フリーランスとして仕事を受注し、利益が拡大してきた場合には、合同会社を設立して法人成りすることで、法人税の優遇を受けることができます。
原価がかからない事業であれば資金調達の優先度を下げることができます。さらにフリーランスとして既に顧客との関係を構築していれば、信頼の面もクリアできるでしょう。
自宅を拠点に活動しているフリーランスの方は、合同会社を設立し、レンタルオフィスを本店として登記することで個人情報を守ることもできます。
合同会社は、設立後の組織変更手続きで株式会社にすることが可能です。
組織変更のために総社員の同意などが必要ですが、株式会社を合同会社に組織変更する場合と比較すると簡易な手続きで組織変更が可能です。
起業当初のコストやリスクを抑えるという観点では、合同会社で小さく会社を始め、軌道に乗ったところで株式会社に組織変更する手法は検討に値します。
事業の成否や資金面に不安がある場合には、株式会社にこだわらずに合同会社で起業してから様子を見るというのも選択肢のひとつでしょう。
以下では、それぞれについて具体的に解説していきます。
先述の通り、合同会社は定款の認証費用がかからず、登録免許税の金額も株式会社より低いため設立費用を抑えることができます。会社を登記するのに最低限必要な金額は約62,000円です。
出資金の低い一人会社としたり、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを利用したりすることで、さらなるコストダウンも可能になるでしょう。
設立費用を抑えて設立できる合同会社ですが、税金の面では株式会社と同様に、法人としての優遇を受けることが可能です。個人事業主として税金を納めるのと異なり、法人化して利益を役員報酬として支払う形にすると、給与所得控除として全体の所得を減らすことが可能になります。
欠損金の繰越控除期間が長くなったり、消費税の課税事業者になる時期を遅らせたりすることも可能です。交際費の幅も個人事業主よりは広く認められるでしょう。
このように、合同会社を設立することで、法人として税金面で様々な優遇を受けることができます。
株式会社における出資者である株主は、出資の割合に応じて配当などの利益分配を受けることになります。
一方で、合同会社については、利益分配の方法について特に取り決めはなく、出資額の大きさではなく業績への貢献度に応じた利益分配を行うことも可能です。
社員の任期などもないため、安定した立場である程度自由な方針で経営を行うことができます。
合同会社では、株式会社における株主総会での手続きがありません。
合同会社の社員は業務執行権を有しており、社員が2人以上いる場合には、社員の過半数の同意があれば業務についての意思決定を行うことが可能です(会社法590条1項2項)。さらに、会社の日常的な業務(常務)については、各社員は個人の判断で行うことができます(同法590条3項)。
常務の例としては、小さな契約や消耗品の購入などが挙げられます。
合同会社では、定款によって業務執行権を有する社員を限定することもできますし、決議の要件を緩和したり逆に重くしたりすることも可能です。
このように合同会社では、重要事項を迅速かつ柔軟に変更できるのです。
合同会社の出資者である社員の責任は有限です。つまり、社員は会社経営によって自分が出資した金額以上の負債を負うことはありません。
社員が無限責任を負うことによると、会社の負債について、個人で所有する不動産や預貯金までもが責任財産となってしまいます。責任が有限であるということは、会社の廃業、倒産によるリスクを抑えるという点で重要です。
なお、会社の融資を受ける際に個人保証をした場合は、会社の倒産に際し責任を負うことになるので注意するようにしましょう。
合同会社では、決算の公告についての規定がありません。
株式会社では、定時株主総会の終結後に遅滞なく貸借対照表を公告することが必要です(会社法440条1項)。公告にかかる費用は会社の規模によっても異なりますが、最低でも税込で74,331円かかります。
規模の大きくない会社では、この公告費用は大きな負担であり、合同会社では公告の義務がないというのは大きなメリットと言えるでしょう。
参照:官報公告料金表
以下では、それぞれについて具体的に解説していきます。
合同会社の設立数は増加してきているものの、まだまだ認知度が低いと言えます。そのため、株式会社と比べると信頼されにくい傾向にあることは否めません。
会社の新規設立件数は、株式会社が毎年9万件程度であるのに対して、合同会社は3分の1の3万件ほどとなっています。
法人として事業を継続するには顧客などから信頼を得ることが重要な要素です。合同会社、かつコスト削減のために資本金を少なくしている場合には、信用を獲得するのに苦労するかもしれません。
事前に取引先との関係構築に成功している場合は別ですが、社会的な信用の面でデメリットを感じる可能性があることを理解しましょう。
合同会社では、株式会社とは異なり新株発行などによる資金調達を行うことができません。既存の出資者から追加出資を受けるのには限界がありますし、出資者には業務執行権が認められるため、むやみに出資者を増やし続けるわけにもいきません。
このように、合同会社では、資金調達の方法も金額も限定されてしまうため、大きな金額を扱う商売には向きません。商売が軌道に乗って大きな金額を扱うことになれば、株式会社への組織変更を検討する必要もあるでしょう。
合同会社では、出資者が出資割合にかかわらず業務執行権を持つことになります。つまり、原則として少額の出資者でも多額の出資者でも会社の業務について同じ発言権を持ちます。
社員同士が上手く連携できているときには、それぞれが意見を出し合い会社を良い方向へ進めやすいという合同会社のメリットが活きるでしょう。しかし、意見の対立などが生じると会社業務が停滞してしまう可能性もあります。
定款で業務執行社員の範囲を限定する、決議の要件を変更するなど会社の業務に支障が生じることのないような工夫が必要です。
株式会社では、経営者の世代交代などの際には、株式の譲渡や相続によって、事業承継を行うのが一般的です。
しかし、合同会社では、社員としての持分を譲渡するためには他の社員全員の承諾が必要です(会社法585条1項)。また、定款に特段の定めがない限り、社員が死亡した場合は退社の扱いとなり、持分は相続されません。
そのため、事業承継の手続きが複雑で、世代を超えて長く会社を続けたい場合には、合同会社という形態は向いていないと言えます。
合同会社の設立に最低限必要な費用として、定款の謄本費用と登記のための登録免許税があります。
定款の謄本費用は2,000円程度です。登録免許税は資本金の額によって変動することになりますが、最低限の金額は、合同会社の場合には60,000円です。
他に事務所を使用する場合には、事務所を借りるための初期費用なども必要になります。
レンタルオフィスやバーチャルオフィスを利用することで、事務所利用の初期費用を大きく削減することができますので、利用を検討してみることをおすすめします。
合同会社の設立にあたっては、次の事項を決める必要があります。
合同会社の設立に必要な事項を決定したら、それを元に定款を作成する必要があります。
合同会社における定款の記載事項は、会社法576条に規定されています。
会社法の規定は、定款に必ず記載するべき内容を規定しています。
その他、業務執行社員が2名以上いる場合には代表者を定めたり、業務執行を行う社員の範囲を定めたりといった内容についても、設立時の定款で規定しておくべきでしょう。
定款に記載した本店所在地は、登記によって公開情報になります。事務所がなく、自宅住所を公開するのにも抵抗がある場合には、レンタルオフィスやバーチャルオフィスの利用を検討してみましょう。
定款が完成したら、登記申請書を作成し法務局にて登記申請を行います。
登記申請に必要な書類は次のとおりです。
登記内容によっては、他にも書類が必要となる場合もあるので注意が必要です。
参照:法務局「合同会社設立登記申請書」
合同会社について、株式会社との比較を通じて向いている業種やメリット・デメリット、設立の手続きを解説しました。
合同会社は、まだまだ認知度が低く社会的信用性を得にくいというデメリットがあるものの、業種によっては株式会社よりも多くのメリットを受けることができます。
合同会社の仕組みについてよく理解し、設立する会社の形態として合同会社が適切なものであるのかを検討してみてください。
この記事の執筆者:
日本リージャスホールディングス株式会社
世界120カ国、3,300拠点、ユーザー数800万人のネットワークを有するフレキシブルオフィスの最大手、リージャスグループ(IWG社)。その日本国内事業展開を担う日本リージャスホールディングス株式会社は、1998年の事業開始から現在までに47都市、172拠点(2022年6月末時点)を開設してきました。その強みは出店地域の特性に応じて様々なタイプのフレキシブルオフィスブランドを展開している点です。国内のリージャスは、高級ブランド「Signature」(シグネチャー)、コミュニティ型の「SPACES」(スペーシズ)、ハイグレードな「Regus」(リージャス)、リズナブルな「オープンオフィス」、交通機関隣接型「リージャスエクスプレス」の5ブランドを展開し、多くの皆様に快適なフレキシブルオフィスを提供しています。