リモートワークの普及や働き方改革の推進に伴い、オフィスのあり方にも多様性が求められる時代になりました。
その中で注目されているスタイルの一つに、SOHO(ソーホー)というスタイルがあります。
様々な文脈で耳にするものの、「SOHOとはどのようなオフィスなのか」、「他のオフィスと何が違うのか」といった疑問を感じている方は少なくないでしょう。
そこで今回はSOHOの定義から確認し、一般的なオフィスとの違いや、どのような方におすすめなのかについてご紹介していきます。
SOHOとフレキシブルオフィスのメリット・デメリットについても比較します。
ぜひ、本記事をオフィス探しにお役立てください。
SOHOとはSmall Office Home Officeの頭文字を取ったものです。
明確な定義はありませんが、大きく分けて「事業形態」と「オフィス形態」の文脈で用いられています。
日本SOHO協会によると、SOHOとは「企業などから委託された仕事を、情報通信を活用して自宅や小規模事務所等で個人事業主として請け負う労働形態のこと」としています。
月数回しか出社せず、在宅勤務が大半の場合であっても、会社との雇用関係がある方は、SOHOとは根本的に異なる労働形態です。
フリーランスも個人事業主という点では同じですが、働く場所に違いがあります。
フリーランスはクライアントのオフィスやコワーキングスペース、カフェなど場所にとらわれずに自由に働くワークスタイルを指し、SOHOは自宅を兼ねた事務所で働くことが前提になっているという違いがあります。
SOHOは、自宅兼事務所として契約できる物件そのものを指す場合もあります。
一般的な賃貸オフィスとSOHOの違いは次の通りです。
比較内容 | SOHO | 事務所 |
---|---|---|
契約形態 | 住居契約 | 事務所契約 |
表札・看板 | 出せない | 出せる |
人の出入り | 不特定多数は不可 | 制限なし |
法人登記 | できない場合がある | できる |
家賃に対する課税 | 非課税 | 課税 |
寝泊り | できる | できない |
表からもわかるとおり、SOHOと事務所では契約形態から制約まで大きく異なります。
本記事では、主にSOHOの物件・契約形態について取り上げます。
上記の表も踏まえて、ポイントをひとつずつ確認していきましょう。
一般的な賃貸オフィスは事務所契約であるため、オフィスでの寝泊りは原則的に禁止されています。
SOHOは自宅兼事務所であり、契約形態も住居契約のため、寝泊りすることに何も問題はありません。
しかし、住居契約であるため店の看板や表札の設置はできない場合が多く、許可なく設置すると退去を求められる可能性があります。
あくまでも自宅のなかに事務所があるといった認識でよいでしょう。
SOHOの場合、家賃や水道光熱費の一部を経費計上ができます。
これを経費の按分(あんぶん)といいます。
たとえば、SOHOの3割の面積を事業用に利用している場合、家賃が10万円の場合、3万円を地代家賃として経費に計上できます。
賃料に限らず、プライベートと仕事で併用しているものは、使用割合を割り出して按分することができます。
通信費や備品などを経費とすることで実質的なコストを抑えられる点は、SOHOならではのメリットといえます。
SOHOは住居兼事務所であるため、近隣住民への配慮などの理由から不特定多数の人の入退室が制限されている場合がほとんどです。
このルールにより、SOHOでの営業が不可能な業種・業界が存在します。
詳細は後述します。
SOHOは住居契約のため、原則として法人登記はできません。
個人事業主として仕事を続ける場合は問題ありませんが、法人化して規模を拡大する際にネックになるでしょう。
管理会社や物件オーナーの判断によっては法人登記が行える場合もありますが、貸主サイドにとっては別途消費税の納税が必要になるため、可能性は低いといえます。
どうしてもSOHOで法人登記を行いたい場合は、トラブルを避けるため管理会社やオーナーに必ず許可を得るようにしましょう。
SOHOを選択することで得られるメリットと、想定しておくべきデメリットを確認しましょう。
SOHOのメリットは以下の通りです。
上述の通り、家賃や光熱費などの経費を計上できることはSOHOの大きなメリットといえます。
賃料や光熱費、通信費などの一部を経費として計上し、税金を抑えられる点は魅力的です。
またSOHOは自宅と事務所を兼ねているため、通勤などの時間的な制約が軽くなる傾向があります。
朝早起きや満員電車、長時間移動などのストレスにさらされることなく、仕事が終わればすぐにプライベートな時間を過ごせるため、貴重な時間の有効活用に繋がります。
さらに、SOHOは事務所契約に比べて初期費用が割安です。
事務所契約でオフィスを借りる場合、自宅とは別に事務所を新たに借りる必要があり、会社代表や個人事業主の方にとって経済的な負担となります。
事務所契約は住居契約に比べて高額な保証金が設定されている事が多く、初期費用は家賃の6ヵ月~12ヵ月分が相場です。
SOHOの場合、初期費用は一般的な住居と同じく家賃の2~3カ月分程度が相場で、敷金礼金がゼロの物件もあります。
住居契約の場合、家賃に消費税がかからないため毎月10%のコストカットにつながります。
ダブルコストを解消しつつ、初期費用や月々の賃貸料の支払いの負担を抑えることができるのです。
次にSOHOで考慮すべきデメリットについてご紹介します。
上述の通り、SOHOは契約形態上、不特定多数の人の出入りが制限されていることが多く、業界や業種によっては利用に適さない場合があります。
対面での接客が必要な販売業、飲食業などの店舗型サービスはSOHOに向きません。
原則的に、物件のオーナーや管理会社が許可を出さない限り登記ができないため、法人化を検討している場合はSOHO以外のオフィス形態を検討するとよいでしょう。
またSOHOでは仕事とプライベートの境目が曖昧になりやすいという特徴が挙げられます。
特に建物の構造として、事務所と自宅のプライベート空間に壁やドアなどで仕切りがない場合は、仕事とプライベート空間が曖昧になりやすいでしょう。
来客の際、お相手にストレスを与えることにもなりかねません。
SOHOを検討するのであれば、部屋数や玄関からの動線や間取りを事前に確認しておくことが重要です。
オンラインで完結する仕事は、特にSOHO向きの業務といえるでしょう。
エンジニア、プログラマー、YouTuber、Webデザイナー、Web制作、ライターなどの業界・業種はSOHO向きです。
また、来店型の業態であっても予約制であれば近隣への影響が限定的なため、物件によってはマッサージやパーソナルジムなどの営業許可がおりる場合もあります。
基本的に個人で仕事を請け負う場合や、WEB上でチームを作り作業はそれぞれの場所で行うなど、人が集まらずに済む事業にはSOHOが向いているといえます。
SOHOに向いていない業務は、不特定多数の人が出入りする業界・業種全般といえるでしょう。
先ほども挙げたとおり、接客業など不特定多数の顧客を対象とする業界・業種はSOHOにまったく向いていません。
また、社名を表示したほうがメリットが大きい場合や登記を必須としている場合も、同様にSOHOは不向きであると言えるでしょう。
コストを抑えて利用できるオフィス形態として、レンタルオフィスやコワーキングスペース・シェアオフィスなどのフレキシブルオフィスも検討できるでしょう。
フレキシブルオフィスは、賃貸契約ではなく事業者ごとの利用規約に則って提供されるオフィス形態の総称です。
賃貸オフィスやSOHOに比べて、契約内容や短期期間などの変更が柔軟に可能なのが最大の特徴です。
一般的に、フレキシブルオフィスにはレンタルオフィス、コワーキングスペース、シェアオフィス、サテライトオフィスなどが含まれます。
レンタルオフィスは椅子やデスク、事務機器などビジネスを始めるために必要な設備が整った個室を借りられるサービスです。
コワーキングスペース、シェアオフィスはどちらも共用の作業空間をデスク単位などで利用できるサービスです。
前者は個室を利用する契約、後者はしない契約です。
どちらも会議室や電話代行サービスなどのオプションを利用できる点などは共通しています。
併せて読みたい:
レンタルオフィスとは?メリット・デメリットや他の形態との違いを比較
SOHOとレンタルオフィス、コワーキングスペース・シェアオフィスそれぞれの特徴をまとめました。
メリット | デメリット | 向いている方 | 向いていない方 | |
SOHO | ・事務所兼自宅として経費を計上できる
・寝泊りできる ・通勤時間がない ・事務所を借りるより初期費用がかからない |
・設備や備品を自分で用意しなければならない
・業界・業種が限られる ・看板が出せない場合が多い ・仕事とプライベートの境目が曖昧 |
・ライターやWeb製作など、オンラインで完結できる職種の方
・自己管理が得意な方 ・働く時間を自由に決めたい方 |
・不特定多数の人の出入りがある業種の方
・自己管理が苦手な方 ・看板を出したい方 ・登記を必ず行いたい方 |
レンタルオフィス | ・基本的に登記が可能
・料金がリーズナブル ・短期利用が可能 ・特定の業種に必要な許認可が取れる場合がある |
・内装や設備の自由度は低い
・オプション追加で料金が高くなる ・共有設備は予約制 |
・許認可を取りたい方
・直近で事業拡大・縮小を考えている方 ・登記を行いたい方 ・起業したてで、初期費用を抑えたい方 |
・設備や内装を自由に整えたい方
・今後も個人で仕事を続けていく予定の方 |
コワーキングスペース・シェアオフィス | ・多くの場合、登記が可能
・低コストで作業スペースを確保できる ・即日でも入居可能 |
・社員の管理が難しくなる
・セキュリティリスクが高まる ・周りに他人がいる |
・登記を行いたい方
・その日の気分で作業環境を変えたい方 ・他の利用者と交流したい方 ・とにかく初期費用を抑えたい方 |
・個人情報など機密性の高いものを扱う方
・周りに他人がいると集中できない方 |
SOHOとフレキシブルオフィスで大きく異なる点は、費用面と登記の可否に関してです。
SOHOは一般のオフィスに比べ、敷金や礼金、インターネット環境などの設備投資にかかる初期費用を抑えられますが、やはりある程度の資金は準備する必要があります。
しかし、レンタルオフィス、コワーキングスペース・シェアオフィスであれば数万円の初期費用で入居でき、法人登記に対応している場合がほとんどです。
フレキシブルオフィスはコストパフォーマンスよく一等地の住所を利用しやすいため、営業や採用の観点から立地の良さを優先したい場合に有効です。
また自宅にいるとなかなか仕事が捗らない方、仕事とプライベートの場所をきっちり分けたい方、経営者同士の横のつながりを作りたい方にとってもメリットが大きいと言えます。
フレキシブルオフィスのメリット・デメリットを、さらに詳しく見ていきましょう。
フレキシブルオフィスでは基本的に法人登記が可能です。
オプション料金がかかる場合もありますが、そもそも登記が難しいSOHOとの大きな差と言えます。
またフレキシブルオフィスは主要駅の周辺や都内一等地にあることが多いため、認知度の高い住所による信頼性向上も期待できます。
大手企業との取引や、銀行の口座開設を進める上でアドバンテージとなります。
コスト面のメリットも大きく、敷金・礼金・保証金や設備などの初期費用を大幅に抑えられます。
オフィス形態 | 利用イメージ | 初期費用目安 |
---|---|---|
コワーキングスペース
シェアオフィス |
・ワークスペースを共有する
・基本的に備品の保管、専用回線の利用は不可 |
数千円~数万円 |
レンタルオフィス | ・専用の個室を利用できる
・法人登記に使用できる場合が多い ・拡大・縮小が比較的容易 |
数万円~十数万円 |
賃貸オフィス | ・長期利用を前提としている
・取引先等の信用を得やすい ・拡大・縮小が困難 |
賃料の半年~1年分 |
賃貸オフィスやSOHOでは2年契約が一般的ですが、柔軟な契約スタイルをもつフレキシブルオフィスでは短期間から利用できます。
レンタルオフィスは月単位、コワーキングスペース・シェアオフィスであれば即日から利用できる場合が少なくありません。
次に、フレキシブルオフィスのデメリットです。
フレキシブルオフィスの場合、賃貸オフィスやSOHOのように内装や設備を自由に変更することはできません。
また、同じ区画を他の企業と共有するため、セキュリティや機密情報の取り扱いに注意が必要です。
入居しているテナントの営業時間に合わせ、夜間の入室に制限があるフレキシブルオフィスもあるため、ワークスタイルによっては不便さを感じるかもしれません。
会議室を利用できるフレキシブルオフィスが多いものの、予約制が大半のため他の入居者と競合する可能性や時間制限などの制約がある点も考慮しておきましょう。
オフィス形態ごとのメリットとデメリットをご紹介してきました。
SOHOもフレキシブルオフィスも、一般的な賃貸オフィスに比べてコストを抑えられる点は同じです。
SOHOとフレキシブルオフィスそれぞれの個性を踏まえると、どのような方に向いているのでしょうか。
SOHOは時間の制約を受けず、自分だけの空間で仕事に没頭したい方に向いたスタイルと言えます。
小規模の仕事を請け負い、自分で決めた進捗を守って仕事に取り組める方に適しています。
自己管理が苦手な方、法人登記のための住所が必要な方、不特定多数の人が出入りする業種は、他の選択肢を検討するのが賢明です。
好立地なアドレスを低コストで利用できるフレキシブルオフィスは、法人登記を考えている方や営業活動・採用のために立地の良さを優先したい方にとって優れた選択肢と言えます。
また1年以内に人員の増減員が見込まれる場合も、短期利用や柔軟な契約変更が可能なフレキシブルオフィスがおすすめです。
リモートワークと出社勤務の併用が当たり前になり、状況に応じて利用スペースを調整しやすいフレキシブルオフィスへの注目はこれまで以上に高まっています。
区画を他の入居者と共有する点は、起業家同士の横のつながりを作りたい方にとってはメリットとなる一方、機密情報の取り扱いや業務中の集中という面ではデメリットになりえます。
各オフィス形態の特徴を紹介してきましたが、オフィスを探す際には運営会社も重要です。
リモートワークの推進や働き方改革による需要の高まりを受け、フレキシブルオフィス市場に参入する企業が増えています。
これまでの運営実績や利用者数、口コミや内覧をもとに、総合的に運営会社を選ぶのが安心です。
実績や歴史ある会社をお探しであれば、リージャスがおすすめ。
リージャスは1989年にベルギーのブリュッセルで創設され、現在ではスイスに本社を置き、ロンドン証券取引所に上場しています。
世界120ヵ国1100都市を超える地域で3400拠点に展開し、会員数は800万人に上ります。
国内では、2020年4月時点で全国44都市、各地の主要エリア170拠点に展開しています。
レンタルオフィスやフレキシブルオフィスをお探しなら、一度リージャスへご相談ください。
SOHOは事務所に比べ、初期費用が抑えられたり、事務所兼自宅として経費計上できたりと多くのメリットがあります。
しかし一方で、法人登記が難しい、不特定多数の入退室が禁止されているなど、状況や業種によっては向かない場合も多々あるでしょう。
SOHOだけでなく、コワーキングスペースやシェアオフィス、レンタルオフィスなど働き方の多様化や政府のリモートワークの推進によって、さまざまなオフィス形態が誕生しています。
出典: テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省
主要都市だけでなく、全国44都市に170拠点をもつリージャスであれば、あなたにあったオフィスが見つかるかもしれません。
起業を考えている方だけでなく、今のレンタルオフィスに満足していない方も一度覗いてみてはいかがでしょうか。
この記事の執筆者:
日本リージャスホールディングス株式会社
世界120カ国、3,300拠点、ユーザー数800万人のネットワークを有するフレキシブルオフィスの最大手、リージャスグループ(IWG社)。その日本国内事業展開を担う日本リージャスホールディングス株式会社は、1998年の事業開始から現在までに47都市、172拠点(2022年6月末時点)を開設してきました。その強みは出店地域の特性に応じて様々なタイプのフレキシブルオフィスブランドを展開している点です。国内のリージャスは、高級ブランド「Signature」(シグネチャー)、コミュニティ型の「SPACES」(スペーシズ)、ハイグレードな「Regus」(リージャス)、リズナブルな「オープンオフィス」、交通機関隣接型「リージャスエクスプレス」の5ブランドを展開し、多くの皆様に快適なフレキシブルオフィスを提供しています。